土佐は「お酒の国」。人が集うところに酒があるのか、酒があるところに人が集うのか…。
とにかく盃を交わしながら語り合うことが大好きです。そのため、お酒にまつわる楽しい俗文化がたくさんあります。
いくつかご紹介させていただきます。
箸拳(はしけん)
箸拳(はしけん)はお箸を使った「じゃんけん」のようなものです。
郷土料理の皿鉢の取り皿に添えられる短めの「赤箸」が道具になります。
箸拳の遊び方
【1】手にお箸を3本ずつ持ち、盃を挟んで向かい合わせに座ります。
【2】先攻・後攻をじゃんけんなどで決めます。
【3】両手を背中に回して、箸が相手に見えないように構えます。
【4】まず、「後攻」が「いらっしゃい!」という掛け声とともに、
自分の箸を0~3本、相手に見えないように、前に出します。
【5】「先攻」が箸を出す番です。
この時、「後攻」が前に何本出しているかを予想し、自分と合わせて3本になるように考えて箸を出します。
「先攻」も、「後攻」と同じように、箸が相手に見えないように出します。
差し出す時の掛け声は「3本!」です。
【6】今度は「後攻」が箸の合計を予想し、宣言します。ただし、「後攻」は「1本」か「5本」しか言えません。
【7】両者手を開いて、合計を数えます。数を当てたほうが勝ちです。
負けたほうは「罰盃(ばっぱい・ばつはい)」を飲みます。
どちらも当たらなかった場合、先攻・後攻を交代し、再度勝負を繰り返します。
先に3回当てたほうが勝ち抜きです。
お互いともが2勝となり、あと1勝となった時の勝負を「大勝負」と言います。
勝負中に、お互いをけん制する掛け声が面白いので、見物するだけでもワクワクしますが
勝負ができると夢中になります。
ルールは簡単ですので、小学生でも楽しめるゲームです。もちろん、小学生はジュースやお茶が罰盃です。
10月(酉の月)は新米の実る月。収穫した新米で酒蔵が酒造りを始めます。
10月1日が酒造元日とされ、「日本酒の日」となったようです。
(参考: 日本酒サービス研究会様サイトより)
その日本酒の日、10月1日に、高知酒造組合連合会の主催で「箸拳大会」が行われます。
高知県内はもちろん、最近では日本全国から箸拳愛好家が訪れて、勝負を挑みます。
団体戦は3人一組。個人戦もあり、デッドヒートが繰り広げます。真剣勝負ですので、お酒も飲みます。
勝負が強いか・酒が強いか…
べく杯(べくはい)
別名:土佐流・ロシアンルーレット
と言っても良い、恐ろしくて楽しい土佐の酒席でのお遊びです。
用意するものは、●小ぶりの「おかめ」盃、 ●口の部分に穴が開けられた「ひょっとこ」の盃 ●りっぱな長い鼻の「天狗」盃 ●おかめ・ひょっとこ・天狗が描かれた陶製の「駒」●丸盆
ですが、天狗の盃は、長い鼻がジャマをして、お酒を注ぐと卓に置くことができません。ひょっとこの盃は穴が開いているので、これまた置くことができません。おかめの盃は、女性なので顔を下にするとかわいそうなので、これまた置くことができません。
この3つの「置けない盃」を手にしたら最後。飲み干すしか道はない!という恐ろしいルールの遊びです。
べく杯の遊び方
【1】丸盆の周りを囲むように座ります。
【2】独楽を丸盆の上で回します。その際、囃子歌を皆で歌います。「べろべろの~、神様は、正直な神様よ 〇〇のほうへとおもむきゃね、それおもむきゃね」…独楽がストップするまで歌います。
「〇〇」には、おもしろい言葉を入れます。「お金持ちのほうへ」だとか「男前のほうへ」など、場が盛り上がるように考えてみましょう。
【3】独楽がストップしたら、独楽の指したほうに居る人が「大当たり」です。駒にはおかめ・ひょっとこ・天狗の絵が描かれています。独楽が止まった時に上になっている絵と同じ盃を、大当たりの人に差し出し、お酒を注ぎます。
【4】大当たりの人は、「いただきます」とあいさつをし、盃のお酒を気持ちよく飲み干します。
飲み干したら「ごちそうさま」とあいさつを忘れずに。忘れると罰として、もう一杯飲まなくてはなりません。
~これでゲームが一巡します。次は、大当たりの人が「○○」を決め、独楽を回して、次の勝負が始まります。
歌の中に出てくる「べろべろの神様」はどんな神様なのでしょうか。
もともとは、江戸時代に広まった俗文化で、「家族の中でオナラをした人は誰なのか?」を神様に問うための占い遊びが、流れ流れて「べく杯」のお座敷遊びになったようです。
家族が輪になって座り、先端を折り曲げた「紙縒り(こより)」を両手にはさんで「べろべろの神は正直よ」と歌いながらぐるぐる回し、回し終わった時に紙縒りの先が向いている人がオナラをした人だと決めるというものです。
この占い遊びが、家からお座敷に移り、「べろべろの神様は 正直な神様で おささ(=お酒)の方へとおもむきやれ、おもむきゃる」となり、紙縒りの先が向いた人は、何か一芸を興じるかお酒を飲むかしたそうです。そのお座敷遊びが、さらに酒好きの土佐人によって、この形になったのでしょう。
ちなみに、この歌での「べろべろの神様」は「屁ひりの神」という神様らしいのですが、神様名簿には登録されていないそうです。
最近、土佐の国の「べろべろの神様」が偶像化されていますが、色合いが鮮やかでなかなか今っぽいですね。
「べろべろの神様」に会うためには、自分自身がべろべろにならないと会えないらしいです。でも会ったとしても、べろべろだから覚えていない、もしくは信じてもらえそうにありませんね(笑)。
菊の花
こちらもべく杯と同じく別名:土佐流ロシアンルーレットです。
これはルールは簡単!
でも、当たれば本当に恐ろしい!(いや、うれしい?)
菊の花の遊び方
【1】参加者人数分の盃を、お盆に伏せ置きます。
【2】伏せた盃のうち、1つだけ、皿鉢料理の飾りにある「菊の花」を仕込んでおきます。
【3】「菊の花、菊の花、当ててうれしい菊の花、どれにしようか菊の花」という囃子歌を歌いながら、一人ずつ盃を開いていきます。
【4】「菊の花」を当てた人が「大当たり」!
開いた盃すべてにお酒を注ぎ、「大当たり」の人はお酒を飲みほします。
その際、飲んだ盃はちゃんと伏せます。飲んで、伏せて、最後に「ごちそうさま」を言わないと、また飲みなおしをさせられます。
~これが一巡です。次は「大当たり」の人が「菊の花」を仕込んで再度スタートです。
人数が多い場合は、盃の数が大変なことになるので、ローカルルールで、何杯かを決めてあげましょう。小さな杯で、囃子歌に乗りながらクイクイお酒を飲むと、けっこうお酒ががまわりますので、配慮をしながら和やかに楽しみましょう。